どもども~、サウンド担当の伊佐です。

「発注編」、「SE作成編」、「BGM作成編」に続いて

「ミックス編」です。

さてさて、なにをミックスする話なのかというと・・・ SE と BGM を同時に鳴らしてみること・・・即ちゲーム上で普通に行われていることを DAW 上で再現してみようゼ!と思ったわけです。

今回は BGM が鳴りつつ、複数の SE が同時再生されていくシーンを  CubasePro9  の「サンプラートラック」という機能を利用してゲームのサウンド再生部分をシミュレートしてみます。

まずは CubasePro9 のメインウィンドウでサンプラートラックを作成します。

このサンプラートラックに作成済みの SE の .wav をロードします。
このとき、連続で発音する時に重複した音でピークを切らないように SE 自体はモノフォニック(単音)に設定します。
また、1度のコールで .wav の全体を鳴らしてほしいのでワンショットを ON にして有効化しておきます。

この作業を SE の数だけ繰り返して複数のサンプラートラックを用意します。

各サンプラートラックはプログラムのコールの代わりに MIDI ノートで制御を行います。

MIDI ノートを使う利点としてはベロシティで音量の大小、ノート No. でピッチの制御がやりやすいので実際の開発にもぜひ組み込んでほしいなと思う機能でもあります。

全てのサンプラートラックが用意できたので BGM を鳴らすためのオーディオトラックを作成し、BGM の .wav をインポートします。
これで SE と BGM が同時に再生できるようになったので、さっそく再生してみると BGM の音量が大きすぎて SE が聞き取りづらく、波形がピークを越えて音が割れたりと非常にバランスが悪いことが分かります。

まずは BGM の音量を -6db 程度下げてあげて、手っ取り早くピークを切る問題を解決するために、最終段の Stereo Out にリミッターをかけてあげることにします。
下げすぎると聞こえないし、かといって下げないとピークを切るしで悩ましいところです。

ん~、確かにピークは切らなくなりましたが、ゴチャついた感じになってしまって聴感上あまり良くないですね。

こういう場合は SE が鳴ったと同時に BGM の音量が下がるような処理があれば良い訳ですが、そのたびに BGM トラックのボリュームカーブを操作するのは非常にメンドクサイ・・・。
また、ゲームの SE はユーザーの操作によって連続で再生されたり、複数で再生されたりするため波形のピークを切る瞬間が予測できません。

今回は DAW 上のシミュレートということではありますが、ちょっとズルをして MIX の技でこの問題を解決してみようと思います。

BGM が鳴りつつ SE を鳴らすという構図なので、まず SE の数だけ用意したサンプラートラックのアウトプットを1つのトラックにまとめていきます。
幸い CubasePro9 にはグループチャンネルという複数のアウトプットをまとめる機能があるのでこれを使っていきます。

次に、SE が鳴った時に BGM を抑えたい訳ですから BGM トラックのインサートにコンプレッサー(音を抑えるエフェクト)を立ち上げます。

このとき、コンプレッサーのサイドチェインを ON にすることでサイドチェインに入力のあったときだけコンプレッサーを効かせることができるようになります。これをサイドチェインコンプと言ったりします。

今回の場合は SE トラックからの入力があった時だけ BGM トラックのサイドチェインコンプが掛かるようにしたいので SE トラックのセンドチャンネルに空のエフェクトを立ち上げてエフェクトの選択ペインで BGM トラックのインサートに立ち上がったサイドチェインエフェクトを選択してあげます。

さぁ、これで BGM 再生中に SE が複数再生されても BGM の音量が自動的に抑えられて SE が目立って聞こえるというMIXが完成しました。

今回もデモ音源を用意しましたのでどうぞ。

デモ音源ではチェインコンプのかかり具合が分かりやすいようにコンプのスレッショルドをかなり深めにしていますが、もっと自然にするならスレッショルドやアタック、リリースタイムを調整してあげれば良いでしょう。

実際のゲームの現場ではチェインコンプを使えるわけではありませんが、有償のサウンドミドルウェアなどでは「ボイスが鳴っているときにほかの音を下げる」という機能があるものもあることはあります。

本当はメーカーがデベロッパー向けに配布している SDK に標準でついててくれると助かるなぁとか思ったりするのですが、サウンドの機能は旧態依然としているのが現状のような気がします。

と、今回はこんなところで・・・
次回は CRI の ADX2LE のレポートでもやってみましょうか。

P.S

ラディアスリー株式会社ではサウンド制作も行っております。
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